【BOOK】科学コミュニケーション論の展開

医療に関する情報発信も科学コミュニケーションの一部ということで。従来のような「一般市民は科学の知識が欠如しているから正しい知識を与えればいい」(=相手を変えるべき)という発想ではなく、科学コミュニケーションを「異文化コミュニケーション」と捉える必要がある(=自分が相手を受容したり変化したりできるかどうか)、という議論を読んでなるほどなぁ、と。

コロナ禍でも明確だったと思うが、私たちの生活は科学的・医学的に正確な事実だけに沿って成り立っているわけではないし、本書でもさまざまなバイアスの存在が論じられているし、科学が信頼されないのだとしたら、そのには社会のさまざまな要素が絡んでいるのだと思う。情報の正確性は重要だけど、むしろ前提でしかなくて、それをどのように伝えるのか、伝えたい相手はどのような背景を持ったどのような人なのか、特に感情的な部分にどう寄り添い、どう受け止めるのかなど、情報周辺のデザインを重視する必要があるような気がする(このあたりは本書の後半にある実践例や展望が参考になる)。