【BOOK】誰がために医師はいる

著者は薬物依存治療の第一人者。
そもそもこの領域に携わるようになったきっかけから、依存症患者とのやり取り、その中での気づきや自身の変化などが綴られたエッセイ。

薬物に依存することで苦痛を消そうとしている患者の様子だけでなく、著者自身が学生時代に多量のカフェイン摂取で何とか試験をしのいだ話や、診療後に頻繁にゲームセンターに通っていた話も出てくるのが非常に効いている。
依存症「患者」(違法薬物であれば「犯罪者」)とされる人たちと、そうでない人の間には、もちろん医学や法律による線引きはあるわけだが、実際のところどれだけ明確に線を引けるものなのか。依存症に限ったことではなく、さまざまな場面で言える話だろうと思う。

線を引くということは、「自分とは関係ないのだ」と切り離すことでもあり、「自己責任」的なものを突きつけやすくなるのだろうな、と。