個展「レンズたちのむこう側」にご来場くださり、ありがとうございました。本ページは、ご来場くださった方のみに限定でお知らせしています。
作品の裏話や、「個展ができるまで」など、いろいろ私の手の内を明かしてしまいたいと思います^^
ぜひブックマークしていただき、定期的に覗いてみてくださいね。
※12/4現在、更新完了しております。
※京都写真美術館のサイトにWEBアーカイブ掲載されております。
<更新履歴>
※どんどん縦に長くなってきていますが(笑)、気長にスクロールしてみてくださいね!
★12/4:創作裏話集「フレーム選びの裏話」を更新しました!
★11/29:「個展ができるまで」(あくまで私バージョン)更新しました!
★11/18:冒頭に「人間観察日記」購入ページへのリンクを追加しました!
★11/16:創作裏話集「写ルンです」の話を更新しました!
★11/14:創作裏話集「ちえフォント」の話を更新しました!
★11/10:「音楽を作品にしてみました」シリーズ、3点更新済みです!
個展ができるまで(あくまで私バージョン)※11/29更新!
2015年に東京で初めて個展を開催し、2017年11月の京都が私にとって2度目の個展でした。もともと芸術畑にいたわけではない私。「個展を開く」ということについて、ちょっと書いてみようかと思います。
「場所を借りて作品を飾れば個展になる」
この言葉、2015年に個展をやってみて一番感じたことです。何はともあれ作品をそれなりの数用意して、ギャラリーなりカフェなり、会場に飾れば、それは立派な個展です。
とはいえ、気持ちのハードルはこれでずいぶん下がると思うのですが、現実的にはいきなり個展をやるのって大変ですし、あとお客様が集まらないと悲しいですよね。
ですので、個展を考える前に、①日頃から作品をたくさんつくっておく、②SNSでもリアルでも、作品をつくっているという情報を広めておく、③それによってファンを作っておく、といったあたりは必須かと思います。
また、展示するための準備というのもいろいろあります。例えば、写真ならプリントして、額装して…といったプロセスって、展示しようと思わないとわからなかったりするもの。プリントしたらイメージが違うこともしばしばあります。
ですので、④として、自分の作品がマッチしそうなグループ展を探してどんどん出展する、というのが個展の前にあると良いですね。そこでお客さんの反応を肌で経験しておくこと。
もちろん、冒頭の言葉は第1歩のハードルを下げるための言葉。毎回「飾ればいい」というクオリティで良いとは思っていなくて、京都に向けては、けっこう自分を追いつめていました(笑)。
次回以降、①~④、私の場合をもう少し深めて書いていこうかと思います。
①日頃から作品をたくさんつくっておく
個展が決まったから突然「つくるぞ!」と思ってできるわけではないですよね(笑)。
「数稽古」という言葉がある通りで、たくさんつくってみないと見えてこないものがあるのではないかと思います。
私自身、1つの作品に使っていた写真素材は、以前はせいぜい4、5枚だったのですが、最近は10枚ぐらい使うことも増えました。たくさん重ねることによる効果が数稽古によってわかってきたからです。
絵を描く人なら、日頃から描く。写真を撮る人なら、日頃から撮る。それをそのままInstagramなどにアップすれば、広報活動にもつながりますね。
そして、たくさんつくるためには、たくさん「見る」ことも必要。私の周りにはプロカメラマンが数人いるのですが、「人の写真を見るのはとても勉強になる」とよく言われます。絵とか他の分野でも同じではないでしょうか。
美術館などに足を運んだり、お友達の個展やグループ展を見にいったり、あとは人の作品を実際に購入して自宅に置いてみることでも、わかることがたくさんあるのではないかと思います。
②③ファンづくりを真剣にやっておく
②SNSでもリアルでも、作品をつくっているという情報を広めておく
③それによってファンを作っておく
…この2つ、おろそかにする作家さんが多いなあと感じます。職人気質の方が多いのでしょうか。個展期間中にも、「SNSなんかやらない、別に言うことないし」という作家さんがいらして驚いてしまったのですが…。(言うことがないじゃなくて、言うことはいくらでも作って提示するんじゃないだろうか)
ずっとアートの世界にいて実力で上がっていける人はそれで良いのかもしれませんが、私のように後から突然始めるような人ならなおのこと、「認知してもらうこと」「好きになってもらうこと」を先にやっておかないといけないと思います。
そして、これは多くの作家さんの反感を買いそうですが(笑)、必ずしも「作品」をいきなり好きになってもらわなくても良くて、むしろ「人」を好きになってもらう方向が、今後ますます重要になっていくように思います(既に重要になってるんですけどね)。
私の場合、2年前の個展の段階では、「私の作品のファン」としてついてきてくださった方よりも、「数年来続けていた私の個人事業のお客様」「私という人間に興味を持ってくれた人」が大半だったという感覚です。入口は必ずしも作品ではなかった。
いくら知り合いでも、作品にまったく興味がない人はさすがに個展にいらっしゃらなかったですし、ファンがいれば駄作でも構わないということではないです。でも、知ってもらえなければ何も始まらないので、「自分の周りに人がいて、個展に来てくれる人が既にいる状態」をまず作ることがスタート地点かなと思います。
(蛇足ですが…これって起業する際も同じことですよね)
④グループ展を探してどんどん出展する
いきなり「個展をやろう!」とするよりも、場が与えられていて、誰かがオーガナイズしてくれているグループ展に参加するほうが圧倒的にハードルが低いです。写真の場合は、主催者側でプリントやパネル作成をしてくれるところもあります。
ただ、「どんなグループ展があるのか」「自分の作風に合うところはどこなのか」といった疑問は当然浮かんでくると思います。なので、「出展する側」として考える前に、まずは「鑑賞する側」としていろいろ探してみることかなと。実際に自分の足で歩いて、自分の目で確かめてみる。
あとは、とにかく仲間を作っておくこと。
私の場合は「写真」と「アート」、両方の切り口で知人がいまして、
・既にグループ展にたくさん出していた知人に、「私でも出せる写真展を教えて」と聞いた(翌日すぐ返事が来てそのまま出展しました)
・アーティストの知人がグループ展出展に誘ってくださり、作品出してみたら「来年個展ね」という話になった(ほんとにやりました)
…みたいなことが、振り返るとターニングポイントになっています。「知人に聞いてみる」「知人の誘いに乗ってみる」というのは一番簡単な道の拓き方かもしれません。適切な人につながってさえいれば。
創作に没頭する時間も楽しいんだけど、外に出ていく時間も絶対的に必要。良き仲間に恵まれますように!
創作裏話集
★フレーム選びの裏話(12/4更新!)
額装して展示する場合、「フレームも作品の一部」だと思っているので、それなりに時間をかけて考えることになります。作品ができて終わりではなく。
私の作品はけっこうカラフルなので、フレームはシンプルな場合も多いのですが、あまりシンプルすぎても似合わないことも多くて、作品を持って額縁屋さんを長時間うろうろするわけです(笑)。
全部は紹介できませんが、数点だけフレーム選びの裏話をご紹介。
「HEART」の緑色のフレームは、実は店頭でこの色に一目惚れしてしまい、このフレームに合う作品を創った…という経緯があります。私にしては珍しいパターンですけど…そんなこともあるのです。
「微笑」のフレームは、ちょっとアンティーク調というか、ゴールドを少し削ったような加工が施されています。ぴかぴかしていなくて、がさがさっとした感じですね。
苦しいことも抱きしめて進もう、というメッセージを付けたかったので、「きれいごとだけじゃないんだぞ」ということで、敢えてがさついたフレームを選択。
逆に「真紅の秘密」は、なるべく真っ白くてつるっとしたフレームを使いたかった作品です。
ファンデーションや下地で完璧な化粧を施した外側(フレーム)。でもそこからにじみ出てしまう色気や隙や欠点や凹凸(黒いマットやバラ)。
★「写ルンです」ブームなんです!(11/16更新!)
あの使い捨てカメラ「写ルンです」が最近若者の間で流行っている!という話、ご存知ですか?こちらの記事にも書いたのですが。
5月には台湾、6月には新潟、7月には大阪&京都に「写ルンです」を持っていきました。
そして実は、その際に「写ルンです」で撮った写真(が土台となった作品)を、今回の個展でも展示していました!
以下の3点です↓
「出発」は台湾の電車の写真です。
ちょっとトイカメラっぽさというか、アナログ感を出したくて、ところどころ光で飛んだ感じに仕上げました。フィルムで撮った1枚の写真だと思った方も多かったですが、あくまで光は後から重ねたものです。
「非日常的日常」は京都・新京極の写真。
重ねたのも京都の写真です。南禅寺の水路のあたりのレンガが見えますでしょうか?また、足元はよく見ると線路。これも南禅寺の近くで、蹴上駅近くのインクラインで撮ったものです。
「HOME」は鴨川が主役。
たしかこちらも京都の写真ばかりを使って創ったような気がします(重ねたそばから忘れてしまうw)。左下のほうに葉っぱのような色が見えるのは、庭園の苔むした地面の写真を重ねたから。
3点とも、少しレトロな色合いに仕上がっています。普通に「写ルンです」が流通していた頃は普通にきれいに写っていると思っていたのに、デジタル時代のピシッとした画像に慣れてしまうと、こんなにもレトロに見えるんですね…。
★「ちえフォント」の秘密(11/14更新!)
個展会場に展示したコンセプトやプロフィール、キャプションは、すべて手書きで作成しました。
2015年、東京で個展を開催した際も、実はすべて手書きにしていました。すると、なぜかこの手書きの文字に人気が集まりまして、キャプションの部分をわざわざ撮影して帰る方まで現れました(笑)。
それ以来、「ちえフォント」という名前まで付いてしまい、何かと手書きするようになりました。「フォント」と言っておけば、完璧な美文字でなくても許される気がして、大変便利な言い回しですw
というか、名前が付くほどになると、逆に印刷するわけにもいかない(笑)。時間が足りず、コンセプトとプロフィールは京都へ向かう前日の夜中~当日の朝に、キャプションはすべて京都に到着してから、何とか書き上げました…。
今回も「読みやすい」「味があって良い」などと言っていただきました。一応、書道を10年ほど習った経験がありますが(だから書の入った作品も創ったわけです)、実はそこまで丁寧に書いているわけではなく、普段の文字に近いです。
読みやすい字を書くために気をつけていることは、実はたった1つ。「漢字をひらがなよりも少し大きめに書く」それだけです!(書道やペン字を習った経験がある方には常識ですよね)
↑会場に展示したコンセプト&プロフィールです。
★「音楽を写真にしてみました」シリーズ(11/10更新!)
今回、実は音楽にインスピレーションを得た作品が複数あります。会場では自由な感覚で見ていただきたいので、敢えて想像を縛るような細かい解説はしていません。そのため、細かい裏話や背景は、この限定ページで少しずつ公開していきますね。
①「walk」
あなたが私に
まとわせてくれる温度が
落としてくれる光が
どれだけ私を強くしてくれていることか
あなたは気づいていますか
こちらの作品は、CHAGE and ASKAの楽曲「WALK」を聴いたイメージをビジュアル化したもの。私にはこんな感じに聞こえた、ということで。
1989年に発売された曲ですので、若い方はご存じないかも?私、実は中学・高校の頃、CHAGE and ASKAが大好きだったのです(今でも好きですけど)。彼らの楽曲の中でも、WALKは個人的に超名曲の1つだと思っています。
歌詞の内容は男性の視点で書かれたラブソングなのですが、「その言葉をもらった女性はどんな言葉を返すだろう?」と考えて浮かんだ言葉をキャプションにしました。タイトルも、楽曲は大文字ですが、私の作品は小文字で。
よろしければ、作品を思い出しながら聴いてみてください。歌詞はこちらからご覧いただけます。
②「家族写真」
家族とは、
別々の生き物が
共に生きようと足掻くこと。
この作品は、星野源「Family Song」を聴きながら、「私の思う家族って何だろう?」と考えて創ったもの。先ほどの「walk」とは違って、楽曲のイメージをそのままビジュアル化したわけではなく、改めて自分で捉えなおして創作しました。
星野さんは、この曲の解説の中で、
- 血がつながっていなくても家族って思っていいんじゃないか
- 相手をほんとに幸せであれと思う気持ちとか、無事であってくれって思う気持ちがあれば家族なのではないのか
- もっと言うと、血がつながっていても家族って思わなくてもいいんじゃないのかな
といった話をされていました。私は星野さんのファンでもあるので、別の記事にそのあたりも詳しく書いております。
私個人の考えとしては、家族ってキャプションに書いた通り、
- 別々の人間(あるいはペット含めた生き物も)が共に暮らしていることなのだけど、
- たとえ血がつながっていたとしても別個の人間だから、分かり合えないことも多い
- それをなんとか、わかりあおうとか協力しあおうとか、足掻いて暮らしている
そんなイメージなんですね。個性もばらばらだし、きれいごとだけではない。その様子をさまざまな色と形で表現できたらと考えた結果が、あの抽象的な感じです。
そして、それってそのまま地球規模に拡大しても同じかなと。地球上の皆が家族、みたいな言い方をするけど、争いが絶えない中で何とか生きている。
丸いマットは地球のイメージ。四角いフレームは、何ともならないものを無理やりまとめているような、そんな気持ちです。
③夢想する音
ふわり漂う旋律が
私を夢の世界にいざなう
こちらの作品は、ドビュッシー「アラベスク第1番」がスタート地点です。
この曲、中学3年のときにピアノの発表会で弾いたんですが、本当に大好きな曲で。アラベスクの話、既に1本記事も書いているのですが、今回改めて、写真で表現できたらいいなと思って創った作品です。
幻想的で1枚ベールのかかったようなイメージがあるので、抽象的でふんわりした作品が創れたらいいな、と思っていました。
なるべく明るめの色で。夢の世界にいざなわれるような、ちょっと非現実的な感じで。
※作品に関するお問い合わせや購入希望などは、こちらから。
★私のカメラロール大公開!(11/8更新!)
昨日は抽象的な作品が人気だったのですが、私の写真フォルダ(iPhoneで編集するのでiPhoneのカメラロール)は、「通常なら使えない写真たち」であふれかえっています(笑)。そういう使えなさそうな写真を素材に、抽象作品を創っているんです。
今日は、普段誰にも見せることのない、私のカメラロールの一部をご紹介!会場で見ていただいた作品の一部は、以下の素材のどれかを使って創られています。
グラスの底の写真、外側の花びらをちぎった後のダリアの写真、そしてダリアの花びら、バラの花びら。花びらの背景は白いシーツです(笑)。
こちらは、ビー玉(水色と青)と、芳香剤のビーズを写したもの。入浴剤なんかも、意外と素材として使えるもの多いんですよ。
そして、マニキュアのラメ。これ、数ヵ月前にTwitterでバズってましたが、個人的には数年前からやっておりました(笑)。私だけじゃなくて、けっこうやってる人いるんじゃないだろうか。
★私の作品づくりについて
私の作品の素材はすべて「写真」です。ですから、まずは写真を撮らないと始まりません。普段は、デジタル一眼レフ(高級なものではなく、5万円程度で売っているような初心者モデルです)またはiPhoneで撮影しています。(今回の個展には、使い捨てカメラ「写ルンです」で撮った写真も使用しました)
そして、写真を複数枚重ねることで、新たな世界観を生み出すわけなのですが、この重ねる作業にはiPhoneのアプリを使用しています。プロが使用するようなパソコンの画像編集ソフトなどでも、同じようなことはできるはずですが、私はそういったソフトを持っておらず、スキルも持ち合わせていません。
そう、実は私の使っている道具や技術って、かなり身近なものばかりなのです。
操作という部分だけを考えるならば、はっきり言って誰にでもできます。
ただ、同じアプリを使っても、素材となる写真が違えば同じものは作れませんし、重ね方のセンスも1人1人大きく異なります。また、加工を施しているからといって、写真の下手さをごまかせるわけでもありません。素材が良ければ良い作品になりますし、そうでなければそれなりのものになってしまう。
写真の腕を磨き続けることと、合成のセンスを磨き続けること。両方をしっかり続けていきたいと思います。
★「余白を残す」ということ
2015年、東京で初めて個展を開催したとき、「ちえさんの付けたタイトルも素敵だけど、私にはこんなふうに見えるんだよね」と、私の作品から独自の物語を感じ取ってくださったお客様が何人もいらっしゃいました。
こういうの、大歓迎です。
たしかに私は私なりに想いを持って作品を創っていて、作品には比較的しっかりしたキャプションを付けていることが多いです。でも、感じ方は自由。人それぞれ違って当たり前です。そう、あなたのレンズと私のレンズは違うのですから。
個人的に、「私はこう言いたいの!」「絶対にこんなふうに感じてほしいの!」みたいな圧迫感を与える作品はあまり好みではありません。見てくださった方がそれぞれ自由に感じていただけるような「余白」を常に持っておきたい。「余白」のある作品を生み出していきたい。
絵や写真などを見るとき、どうしても「これはどういう意味で創られたのか」「この作品から何を読み取ればいいのか」と考えてしまって、「正解」を求めてしまう人が多いように思います。少なくとも私の作品に関しては、教科書的な正解などないし、要らないと思っています。
むしろ、「なんかきれいだね」「なんかよくわからない」「あんまり好きじゃないかも」ぐらいに直感的・感覚的な見方でもまったく構わない。
私の作品たち、あなたにはどんなふうに見えましたか?
個展のお祝いに頂いたミッフィーのぬいぐるみ&電報