oikawachie official website

雑食系フリーランス 及川智恵/世界には、人の数だけ「面白い」が溢れている。

人間観察日記

【人間観察日記・16】仕事始めはカフェ出勤

投稿日:2018年1月25日 更新日:

カフェはいつもやさしくて、コーヒーはいつも少しだけ現実的で苦い。

 

 

Vol. 16 仕事始めはカフェ出勤

新年4日、仕事始め。お正月モードを抜けて、少しずつ元通りになっていく街。

そろそろエンジンをかけ直さないとな、と思った私は、長らく引きこもっていた自宅から近所のカフェにやってきた。

自分も含め、まだどこかふわふわして寝ぼけまなこの人々。客層もまだいつも通りではない。もう数日、正月休みの人もいるのだろう。

 

スーツ姿の男性たちが、集団でぞろぞろと入店してくるのが見えた。

 

ビジネスマンが来ること自体はまったく不思議ではないのだが、「集団で」というところが明らかに異様だった。最初に入ってきたのは数人だったが、次々と同じような出で立ちの男性が入ってきて、いつの間にか15人ほどの集団になっていた。

女性は1人もいない。すごく若いわけではないが、白髪の人も1人もいない。まったりとやわらかな空気の流れるカフェの一角が、いっぺんに黒く引き締まった。

「カフェに出勤してきた」としか言いようがない感じなのだが、必ずしも仕事の話をしているわけでもない。「あけましておめでとうございます」の挨拶の後は、お正月の過ごし方などの他愛もない会話をしているようだ。空気もゆるい。

 

なんだろう、ノンアルコール居酒屋みたいだ。

 

スマホで時間を確認したら、朝10時半を過ぎている。一般的な出勤時間はもう過ぎているといえるだろう。

こんな時間帯に、会社ではなくカフェにぞろぞろとやってきて、コーヒーを飲む男性たち。モーニングサービスのトーストをかじる人もいる。

私はこの時間帯にこのカフェにいることが比較的多いのだが、こんな集団は初めて見た。新年限定の光景なのだろう。新年1発目だから、出勤時間が遅くて、なんとなくみんなカフェに集う流れなのだろうか。

 

「ハレ」という「ケ」という言葉がある。おめでたい非日常と何でもない日常、という感じだろうか。

1月4日というのは、多くの人にとって、正月という「ハレ」から日々働く「ケ」に戻る境目にあたる。

 

言葉だけを見ていると、きれいに2つに分かれているように錯覚してしまうけど、そんな簡単な話ではない。新年の色がめでたい紅白なら、一般的なオフィスの色はスーツやPCなどの黒。どう考えても違いすぎる。

現実を考えてみると、なおさら簡単な話ではない。カレンダーなら日付の境目に線を引けるかもしれないけど、少なくとも人間の心の中はなかなか切り替えがきかなくて、紅白が徐々に濁って赤黒くなっていく感じだろう。

どうしたって仕事始めはまだ少しぼんやりしてしまうし、エンジンをかけるだけでも精一杯だったりする。普段の週末以上に、「ああ、会社に行くの嫌だなあ」という気持ちが増幅したりするじゃないですか。

 

そう考えると、ブレンドコーヒーのような茶色やカフェオレのようなベージュは、ちょうど紅白と黒の間のグラデーションなのだな、と思う。非日常と日常の間に橋をかけてくれる経由地が、カフェ。

新年のおめでたい酒盛りモードを無理やり終えて、「ほら、働け」と社会に放り出される前の、ちょっとしたモラトリアムというかリハビリというか。

 

個人的には、そもそもカフェって正月に限らず、「経由地」とか「境目」として完璧だなと思うことが多い。

仕事の合間に、あるいは仕事をするために、私はカフェをよく利用する。「カフェに行こう」と思うのは、「仕事場ではどうもやる気が出ないから外に出たい」か、「根詰めて働いて疲れたから頭を冷やしたい」か、だいたいどちらかだ。

「仕事やる気モード」と「ゆるみモード」の間に、カフェがある。70:30のときもあれば10:90のときもあるが、カフェはその曖昧さをゆらりと受け入れてくれるから、ちょうどよく過ごせて、ちょうどよく家に帰れる。

 

今私がいるこのカフェは、少しレトロな雰囲気の内装で、全体的に茶色い。真っ黒でもなく、おめでたいカラフルでもないこの空間は、非日常と日常のはざまにあるグラデーション的経由地として、とても心地良い。

正月休み明けのリハビリには最高じゃないか。

男性たちが集ってきたときには何事かと思ったけれど、考えてみたらなかなか良いシステムではないか。新年初日はとりあえずカフェに集合。出勤は少し遅めでOK。それぐらいのゆるみがないと、残りの362日なんてやってられないよなあ。

 

黒ずくめの集団のほうから声がした。

 

「さあ、行きたくねーけど行くか~」

「あーあ、心の声が漏れちゃったよ」

 

時間は11時を過ぎていた。彼らは非日常と日常のはざまを抜け出し、スーツとPCで黒く染まるオフィスへと出かけていったようだ。本音はとりあえず、グラデーションの中に溶け込ませて。

 

いってらっしゃい、戦う黒の世界へ。

私もだ。がんばろう。

 

 

 

本サイトに書きためた「人間観察日記」を大幅に加筆修正&新作追加しました^^

↓↓↓

こちらから1編だけ立ち読みできます。残りはぜひお手元で。

 

 

-人間観察日記

執筆者:

関連記事

【人間観察日記・5】理想的な写真の撮り方講座

写真は「真実を写す」と書くけれど、そもそも「真実」は1つじゃないといつも思ってしまう。撮る人の数だけ真実があって、「個々の真実が写る(写ってしまう)」というのが本当じゃないかなあと。   & …

【人間観察日記・10】良い店に共通するたった1つの条件

  人間とは、ゆらぐ生き物である。     Vol. 10 良い店に共通するたった1つの条件 「おはようございます~暑いですね~」 先に会話を始めたのは、70代ぐらいのマ …

【人間観察日記・8】就職活動、真っ只中

人間、楽しいことなら簡単に覚えられるものなのだ。興味のないことは聞いたそばから忘れていくのにね。     Vol. 8 就職活動、真っ只中 頻繁に立ち寄るお気に入りのカフェ。いつも …

「自己啓発本は役に立たない」と思っているあなたへ。

じこ‐けいはつ【自己啓発】 本人の意思で、自分自身の能力向上や精神的な成長を目指すこと。また、そのための訓練。(デジタル大辞泉より)     「自己啓発本」という一大ジャンルがある …

【人間観察日記・12】笑わなくても、あなたは素敵よ

笑っても笑わなくても、あなたはやっぱりあなたで。       Vol. 12 笑わなくても、あなたは素敵よ メガネの掛け心地が悪い。 メガネは何本も持っているが、気に入っ …

What’s New

【What’s New】
*最新情報をお知らせします*

エッセイ集「人間観察日記」Amazonで発売中!

フォトブック「レンズたちのむこう側」発売中!

 

「雑食系フリーランス月報」
↓↓近況や内緒話など毎月5日にお届け中↓↓
メルマガ登録フォーム
お名前  *
メールアドレス  *