【持続可能な資本主義】『誰かの犠牲で成り立つ経済を、終わらせよう』

 

この本は、紹介しないわけにはいかないやつです。

 

 

いやあもう、帯に書いてあるこの言葉だけでぐっと胸が熱くなります。

 

 

『誰かの犠牲で成り立つ経済を、終わらせよう』

著者の新井和宏さんは、鎌倉投信という資産運用会社を立ち上げた方の1人です。投資とか資産運用って、資本主義ど真ん中の世界のように感じるんですが、鎌倉投信はちょっと変わった存在としてだいぶ有名になってますね。

 

鎌倉投信が投資判断をするのは「いい会社」のみ。「いい会社」とは「これからの社会に必要とされる会社」、「経済性と社会性を両立している会社」を指します。利益さえ出ればいいと割り切るのではなく、社員、取引先、地域、ひいては社会全体にどう貢献できるかをいつも考えている。そんな「いい会社」に、短期ではなく長期で投資しようというのが、鎌倉投信の運用の基本方針です。(p.6)

 

普通は「経済的に利益が出るかどうか=お金になるか」という観点だけで投資を決めるのでしょうけど、それだけじゃなく、顔の見える信頼関係や社風や共感など、数値化できない「見えざる資産」も重視するのが鎌倉投信。

 

で、この本の内容なんですが。

 

お金や効率ばかりを重視する今の資本主義は既に息切れしてしまっている。資本主義を完全に変えてしまうことは難しいかもしれないけど、かつての日本的な経営の良いところをうまく取り入れたら、少しでも良くなるのではないか?

 

…という感じのことが書いてあります。誰も犠牲にしない経済のしくみ。ちなみに犠牲にしない対象には、人だけじゃなくて環境なんかも含まれています。

 

 

持続可能な資本主義ってどんな形?

この本で提案されているのは、「三方よし」をさらに発展させた「八方よし」という言葉です。

近江商人の「三方よし」は「売り手よし、買い手よし、世間よし」ですが、新井さんの提案する「八方よし」は、社員、取引先・債権者、株主、顧客、地域、社会、国、経営者…この八方全部に共通する価値を見出しましょう、というもの。

 

そんな全方位に共通する価値なんてあるの??と思うかもしれませんが、実際にこの八方よしを実現している企業が、たくさん事例として紹介されているんです。

※ちなみに、私が尊敬する山口絵里子さんが経営するマザーハウスも掲載されてます。マザーハウスを初めて知ったときは、ほんと衝撃を受けたのだよなあ。

 

彼ら(※本書で紹介されている「いい会社」)に共通するのは、いままで「コスト」だと思われていたものを「つながり」により「コスト」ではなくすという発想の転換です。「いい会社」にとっては社員の人件費も、取引先への支払いも、株主への配当も、コストではなく、「付加価値の分配」になります。顧客も、つながりを感じた企業に対しては、出費を単なるコストだとは考えません。また、「いい会社」は地域、社会、国に対しても喜んで利益を還元します。企業は独立して存在するものではなく、企業の「外」とのつながりのもとに成り立っていることを自覚しているからです。(pp.162-163)

 

お金だけを基準に考えていると、人件費はコストだし、取引先への支払いもコストだし、あたかも全部マイナスのような印象になってしまう。コストは削減すべきものだ!ってなっちゃうし。

でも、「つながり」があるとそうとは限らないのですよね。身近な例を考えるとすぐにわかる。

例えばあるミュージシャンのファンだったら、そのミュージシャンにお金を払うことって必ずしも「コスト」って感じない。むしろ楽しい時間をプレゼントしてくれるから、高いお金を払っても「利益が得られた」気持ちになるわけで。

 

そう、ファン作り。

 

顧客、社員、取引先や株主、すべてのステークホルダーと目標を共有し、ファンになってもらう。これが、「八方よし」を目指す企業の究極のゴールです。(p.94)

 

個人事業のレベルでも言われる話ですよね、ファンを増やすということ。

ファンが増えるって、顔の見える関係性で、「人柄」とか「想い」とかに共感してもらって、「この人から買いたい」「この人のものなら買いたい」っていう信頼関係を築けることだと思います。

企業レベルでもたぶん同じなんだよね。共感を呼ぶような理念を関係者みんなで共有して、企業といえどもちゃんと顔の見える「人間関係」を作っていくということでしょうか。

 

既にモノやサービスは飽和していて、買うだけなら何でもある時代。だからこそ、心と身体を持っている私たちに必要なのは、ちゃんと人間扱いされることっていうか、体温のちゃんと感じられる関係性なのかもしれません。

 

 

誰も犠牲にならない、誰もおそろかにされない

これ以上の本の中身については(まだまだ面白いことがいっぱい書いてあるの)、ぜひぜひ手に取って読んでいただくとして、ちょっとだけ私の話をさせてください。

 

私はこの本の「持続可能な資本主義」とか「誰かの犠牲で成り立つ経済を、終わらせよう」といった言葉に吸い込まれるように惹かれてしまったのだけど、大学時代、国際関係論を学びながら考えていたことってまさにこれなんですよね。

資本主義って、何かとマイノリティの立場(途上国とか貧困層とか)にあるものたちが犠牲になりやすい制度で(なんかそんな卒論を書いた気がする)、そのマイノリティ側からの視点をいろいろ研究していたのが大学時代です。

 

大学を出て、まったく畑違いの世界に進んでしまったと思っていたけど、私の想いの一部分は、たしかに今も22歳の頃と同じところにあるのだなと、この本を読んで再確認しました。

 

稼ぎとか偏差値だけじゃ測れないものを人間はたくさん持っていて、そういうものが複雑に絡まって集まって個性を作っている。誰の個性も犠牲にならないように、魅力的で面白い人たちがもっと世に出ていけるように…。

私がそう思って個人事業を続けてきたのは、たぶんあの頃、政治とか経済とか開発論とかを勉強していたときから変わらない気持ちがあって、違うフィールドであっても、やっぱりその気持ちを実現したいからなのだと思います。

 

誰も犠牲にならない、誰もおろそかにされない社会。

 

こんなにしつこく思っているのだから、私もできることをできるだけ、ね。

 

 

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実はこの本、出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンさんでのイベントに参加しまして、新井さんご本人のお話を聴いて頂いてきたのでした。もう1ヵ月以上前の出来事なんですが…。

 

 

サインもありがとうございます!

新井さんのお話を伺うのは初めてだったんですが、すごく面白くてですね、いろんな会社の話を生で聴けました。けっこう講演とかされてると思うので、機会があったらぜひ。

 

 

お金や成長ばかりを重視する現状の世の中のしくみに、もやっとしたものを感じている人、大勢いるんじゃないだろうか。そんな方はぜひお読みくださいませ。事例も多いですし、決して難しい本ではないです。