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ひとりごとコラム

「好き」の終わりは、とりあえず戸惑う

投稿日:

大好きだったものが、ある日突然好きではなくなってしまったこと、あなたにはないだろうか。

 

私にはある。正確に言うと、ちょうど今朝あった。

 

いつも通り、仕事に出かけるために身支度を整え、いつもつけている香水を半プッシュだけ、手首につけた。手首をすり合わせ、耳の裏側にも少しなじませる。もう何年も使って慣れ親しんだ、ほど良く甘くてフルーティな香り。

急がなきゃ。香りに浸る間もなく、コートをまとい、スヌードをかぶり、荷物を持ってぱたぱたと玄関に向かう。

 

…すーっと、なじみのない香りが通りかかった。

 

香水のような香りではあったが、明らかに違和感のある香りだった。少なくともさっきつけた香水とは違う。あんなに甘くなく、もっとグリーンで少しつんとしたような感じに思えた。

 

こんな香り、我が家のどこにもないぞ。

 

何かの香りが移ったのだろうか?いや、でもコートにもスヌードにも、移るとしたら自分の香水か喫茶店のタバコの臭いぐらいしか思いつかない。まったく思い当たる節のない、どこから来たのかわからない香りだ。

あまりに気になったので自分の身体をあちこち嗅いでみたのだが、結論として、なじみがないと感じたその香りは、まぎれもなく普段の香水の香りだった。嗅げば嗅ぐほど、そう結論付けざるをえなかった。

 

おかしい。何かがおかしい。

 

何年も使ってきた香水なのだ。いつもの香りのはずなのだ。それが、今日に限って全く違う香りに感じる。しかも、大好きな香りだったはずなのに、今日の香りは好きではない。

 

頭の中で会話が始まった。

 

ちょっと繊細でふんわりとした私が言う。

「好きな香りが変わるって…何かのサインだろうか…変化の前触れとか…」

 

冷静な私がバッサリと返す。

「何でもかんでもサインだと思うなよ、拡大解釈しすぎだから」

 

まったく正反対の二人。話がまとまるはずがない。

 

「いやいや、でも香りで今の気分を知るみたいなセラピーなかったっけ」

「んなもん、ちょっと体調が変わっただけでも嗅覚なんて変化するでしょ」

「まあそうかもしれないけどさ…私今まで、この香水ずっと好きだったんだよ?」

「忘れてるだけでしょ、あまりいい匂いだと思わなかった日もあったんじゃないの?」

「えー、覚えてるってばそういうことは。今日に限って違和感があるんだよぅ」

「それか、その香水買ってからずいぶん経つでしょ?劣化でもしたんじゃないの」

「そんなぁ、まだいっぱい残ってるんだからぁ、それにまだ使えるってば」

「だいたいあなた、しばらく前にエルメスの香水欲しいって言ってたのどうしたわけ?」

「まだ買ってないよ、だってこれ好きだったんだもの」

「じゃあそれこそ早くエルメス買えっていうサインなんだよきっと」

「えー、そんなサインあるわけないじゃん、セラピーのほうがまだ信用できるー」

「違う、エルメス好きだっていうならさっさと買えって話よ、好きなもんをどうしてもったいぶるんだあんたは」

「でもさぁ、もうエルメスだいぶ前だからさ、もしかしたらあのときと好み変わってるかもしれないよね」

「あーもう、だったらまたエルメスでもどこでも行って新しいの試してきなさいよ、じれったい」

「うー、今日はリュックとスニーカーだからエルメスなんて入れない~」

 

…だいぶ不毛な展開になってきた。めんどくさい女と付き合うってこんな感じなのだろうか(自分なんだけれども)。

 

誰かを好きになった途端に相手の匂いが好きになってしまう、という話がある。香水であれ、体臭であれ。たしかにそうだな、と私も思う。

香水を変えるときは心変わりの証だ、という話も聞いたことがある。これは人それぞれかもしれないけど、香りというのはそれだけ、人に密接に影響するもので、人を表してしまうもので、人の記憶を呼び起こすものなのだろう。

 

とはいえ、本当にどういうことなのか、どうしたものか、頭の中の私は平行線をたどったままである。

 

これを書いている今は、違和感を覚えたその日の夜だ。1日中、香りにはなんとなく違和感が残ったままだった。

なんとなく、香りに詳しい人に心理的な話を聞いてみたい気もするし、冷静に明日もう一度つけてみて感じなおせばいいような気もするし、服装はともかくとして香水売り場に出かけたほうがいいような気もする。

 

でも、ね。

 

そもそも「変化のサイン」って思ってしまった時点で、私は気づいているのだ。

「変化」という発想を思いついた段階で、私は変化したいのだし、ずっとずっと変化したかったのだし、変化のサインだと思いたいのだ、と。

 

 

 

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