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読書の記録

【いのちの車窓から】私が星野源の文章に嫉妬してしまう理由。

投稿日:2017年4月18日 更新日:

「なんて面白い人なの!」と思ってしまってから数ヵ月、現在も星野源さんに絶賛注目中でございます。

 

星野さんのことが気になりだした昨年末って、個人的に「先が見えない」「何をしたらいいのかわからない」と感じていたタイミングだったんですが、

「まだまだやれることあるでしょ!」って盛大に背中を蹴飛ばしてくれたのは、年末年始にまとめて読んだ、彼の過去の著作でした。

 

同じ年に同じ県で生まれていながら、はるかかなた先(というよりも別世界みたいなところ)を走っている人ですけど、

誠実な言葉や価値観、そして多様な形で世に送り出されている表現から、いろいろと栄養をもらって自分の血肉に変えようとしている今日この頃です。

 

そして、最新刊『いのちの車窓から』も早速読みました。

 

 

思わず笑えるものから胸にじーんとしみるものまで、どのエッセイも細やかに穏やかに綴られていて、それがまたとても良いのだけど、

それと同時に、「ああもう、こういう文章が書けるようになりたいんだってば!くそぅ!星野源!」っていう身の程知らずの嫉妬をしております。

 

文章はもともと得意なほうだったし、どんな本を読んでも「こういう文章が書けたら…」と思うことってあまりなかったのです。

でも、星野さんの本だけは毎回なぜかこういう気持ちにさせられる。年末年始に背中を蹴られたときも、やっぱり文章には嫉妬していた。本当に不思議です。

 

なんでなんだろう。

星野源という人の文章には、いったい何があるのだろう。

 

 

すごくフラットなのに愛がある。

文章自体はとても穏やかで、むしろ淡々としているぐらい。

エッセイだからご自身の感情も入っているのだけど、とても客観的でフラットな感じのする文章なのです。

それなのに、愛がこもっていて、奥行きも広がりもあって、しかも面白い。ああ、ずるい。

 

文章って人柄がそのまま出てしまうものだから、きっとそういう感じなのでしょうね、星野源さんという人は。

 

あとがきにはこんなことが書いてありました。

10年ほどエッセイを書き続けて気づいたことですが、文章のプロとは、ありのままを書くことができる人ではないかと思います。

(中略)

作家のキャリアに関係なく、文章力を自分の欲望の発散のために使うのではなく、エゴやナルシシズムを削ぎ落とすために使っている人。それが、僕の思う「文章のうまい人」です。

 

文章の目的にもよるかもしれないけど、これもう200%ぐらい同意します。

でもそれと同時に、この境地に達するのがどれだけ大変なことか

 

こう見られたい、こう見せたい、もっと自分を知ってほしい、もっと売れたい。

文章はいとも簡単に、欲で濁ります。いくら隠しているつもりでも、隠しきることはできない。

 

私は比較的フラットだと言ってもらうほうだけど、それでも自分で書いていて気持ち悪くなることが多々あります。

読み手を誘導するような文章になってるぅぅ…とか、欲を隠そうとしておかしな文章になってるぅぅ…とか、もうがっかりすること多数。

 

人間、エゴがまったくない人はいないと思うし、多少エゴが見え隠れしてしまうのはご愛嬌じゃないかなと思ったりもするのだけど、

私もやっぱりその境地に至りたいのだよ。エゴやナルシシズムを削ぎ落として、ただありのままに書けるところまで。

 

 

好きな物事に対して素直。

星野源さんって、ラジオなんか聴いてても、好きなことをものすごーく嬉しそうにまっすぐ語るのですよね。それこそ少年のように。

で、この本にも、好きな人のことや好きな物事のことが、素直に好きだと綴られています。

 

でも、大人になってからこれだけ素直に好きなものを好きだと言える人、意外と少ないんじゃないだろうか?

そもそも、何が好きだったか忘れちゃってる大人だってけっこう多いよね?

 

好きだったはずのことも、いつの間にか忙しさにかまけてどこかに行ってしまったりとか。

たとえ好きなことがあったとしても、周りの反応が気になったりして、恥ずかしくて心の中にしまいこんでしまったりとか。

 

周りの目に関係なく自分の好きなものを好きだと言い続けて、追い続けられるのは、やっぱり芯があってカッコいいことだよなあと。

(今流行り?の「好きなことを仕事にする」っていうのは、そういうカッコいい人たちのためにあると思う)

 

だいたい、私自身がそれ全然できなかったんだよね。子どもの頃から。

何か言うと否定されてしまうような気がして、自分の感情はいつも心にしまったままだったし、

大人になってからは、仕事に振り回されすぎて、好きとか嫌いとか長らく置き去りにしてきたような気がするし。

 

まあ、ある程度好きなことが仕事になっているのは事実ではあるのだけど、

もっと楽しいムダなことをいっぱいしてきても良かったなと、星野さんの本を読んでいるとなんとなく後悔させられてしまうのです。

 

 

描写や表現の面白さ。

「ねえ、なんでそういう言い方思いつくの?」みたいな箇所がいっぱいあるのですよねぇ。

 

例えば、要所要所ですごい笑ったのが、柴犬に対する愛が炸裂しまくっている『柴犬』というエッセイなのですが、

(大好きな犬を飼ってしまったら外に仕事に行かれない、という話)

それはすなわち二度と帰ってこられない動物的失楽園への入園である。

…なんなのー。「動物的失楽園への入園」ってなんなのー。どうしてそんな表現を思いつくのですか。

 

(隣にいる柴犬がこっちを見たら、きっと触りたくなってしまう、という話)

見ず知らずの者を急に触ってしまったら、それは痴漢である

写真が撮りたい。

しかし、見ず知らずの者を写真で撮れば、それは盗撮である

…犬のことを人間並みに扱うほど犬が好きなのは読んでるとよくわかるんだけど、

さすがに犬に対して「痴漢」とか「盗撮」とか、真面目に淡々と書いている文章に突然出てくるとマジで笑います。やめてもう。

(※引用じゃ面白さが半減しちゃうと思うので、ぜひ本買うか立ち読みするかしてください)

 

あと私は、自分の見たものを「心のシャッターで撮っておく」みたいなことがうまくできないのですね。

言語になっていないものを記憶するのがすごく苦手なので、後から文章にするときにすごく困る…。

もっと詳細に描写しないと伝わらないのに、その詳細が全く持って思い出せない。いつもぼんやりとした雰囲気しか記憶にない…。

 

でも星野さんのエッセイ読んでいると、ちゃんと情景が浮かんでくるんだよね。ぐぅ。

これでいて、最初は文章が苦手だったそうですから。苦手だから仕事にしちゃって鍛えたと言いますから。ぐぅ。

 

 

星野源はきっと、私が置き去りにしてきたものを持っている

※星野源さんの本は、カバーを外すところまでが読書です(敢えてこれ以上ネタバレしないでおきます)。

 

ただ単に「自分にないものを持っている」というだけなら、たぶん嫉妬まではしなかった。

 

私は切実に、こんなふうにありたかったのだと思う。

私が途中で置いてきてしまったものを、星野源という人はしっかり持ったまま歩いてきた。

 

エゴを削ぎ落とすことは大切で理想だと思いながらも、どこかで「エゴがあったってもういいじゃないか」と諦めて軽くさじを投げていたのは私です。

本当に好きかどうかわからないものを、ごまかしながら「たぶん好き」と思い込んで、自分の気持ちを適当におさめようとしてきたのは私です。

昔から文章が得意だったことに甘えて、もっと表現を磨きたいと頭の片隅でずっと思いながらも、そのまま何もせずに年だけ重ねてきたのは私です。

 

ああああああああ。

 

他にもいろいろあるのです、本を読んでいると。

 

下手だからこそ頑張ってできるようにしたい、というとてつもない努力の精神。

人見知りだと言うのは、コミュニケーションする努力を放棄しているという恥ずかしい宣言だ、という気づき。

冗談や妄想レベルだったことを、何年も、何十年もかけて、次々に現実にしていく力。

 

ああ、すごいなあという尊敬の気持ちと、翻って自分は…と思ったときにぐさぐさ胸に突き刺さる痛みと情けなさと。

 

「嫉妬や羨みの感情が生まれるのは、自分もそうなれるからだ」という話を聞いたことがあります。

さすがに、長年の努力を経て全国的なスターになった人に対して、「自分もそうなれる」などとおめでたいことは軽々しく思えないのだけど、

幸いまだ人生は続きそうなので、どこまで行けるかわかりませんが、今からでも間に合いそうなことを1つずつ追いかけてみたいと思います。

 

違う人間である以上、いくら真似ても同じにはなれないけれど、私の中にエッセンスを取り入れることならいくらでもできるはずだから。

 

 

誰が読んでも読みやすくて、何かしら感じるところのある本なので、ファンじゃない方も読んでみて損はないと思うよ。

 

こちらの本については以前記事を書きました

 

他の本もおすすめ。年を重ねる中での進化が明らかに見て取れます。進化し続けるのは本当にすごいこと。

 

 

そして実はライブのチケットも当てました。新潟に遠征します。

どんなエンターテイメントが見られるのか(敢えて音楽とは言わない)、本当に楽しみ。

 

 

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