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人間観察日記

【人間観察日記・7】コーヒーを飲み干したら、この関係は終わり

投稿日:2017年6月15日 更新日:

人間なんて、どうせすれ違いの連続なのだから。

 

 

Vol. 7 コーヒーを飲み干したら、この関係は終わり

普段あまり行かない街で、ショッピングセンターの中にあるカフェチェーンのカウンター席に座って、コーヒーを飲んでいた。

平日の昼間の住宅街。客の年齢層は高めで、その中にサラリーマンや休憩中の店員が混じっている。50席ぐらいありそうだが、店内はほぼ満席だ。

 

ふと顔を上げると、目の前のガラス越しに別のコーヒー店が見えた。

コーヒー豆の販売がメインのお店で、隅っこにカウンターがほんの5、6席設置されている。販売しているコーヒーをその場で飲むことができるようだ。

カウンターの中には、50代ぐらいの女性店員が1人。そして、カウンターの左端には、隣り合って座る60代ぐらいの女性客2人の背中が見える。店員と話をしながらコーヒーを啜っているようだ。

 

店員の楽しそうな表情を見ると、2人は常連客だろうか。とはいえ、店員はフレンドリーだが近すぎない、良いバランスで接客しているように見える。

客同士は知り合いのようだが、これも友人として一緒に来たのか、はたまた店で知り合ったのか、判断のつきづらい絶妙な距離感を保っている。

ひとまず、3人は特別親しい間柄ではない、とだけ結論付けることにした。

 

しばらくすると、60代ぐらいの男性客が1人、カウンターの右端の席についた。

 

店員の女性は、その男性と話し始めた。そして、女性客2人も、3席ほど間を空けて座っているその男性に何か話しかけている。遠目に見ても、女性客と男性客は明らかに知り合いではない。空気感がそう物語っている。

 

そういうお店なのか。

 

カウンターで知らない人と話をするような店を、私はあまり多く知らない。1人でそっとしておいてほしいと思ってしまうことが多いから、カフェに限らず、あまりそういう店に入らない。

どうも他人のことを敏感に察知しすぎてしまう自分としては、知らない人に話しかけられるというのは、正直なところ大きな負荷なのだ。体力的にも精神的にもかなりの余裕がないと、なんとなく気疲れしてしまう。

でもだからこそ、そういうお店を素直に楽しめる人がうらやましくもあるし、そういう人になってみたいと思ったりもする。

 

ほどなくして、2人の女性客のうち1人が席を立った。会話の総量は少し減ったが、店員と男性客と残された女性客は、引き続き会話をそれなりに楽しんでいる。

店員の力量なのだろうか。間に入って話をつないでいるようにも見える。それも、「つないでいる」ということを感じさせないような、無理なくとても自然な形で。

 

たまたま居合わせた人との会話に必要なことは何だろうか。

少し考えた後、相手との共通項を探すことかな、と思った。

 

多くの人間関係は、共通項から始まるような気がする。学校や職場が一緒とか、趣味が一緒とか、好きな食べ物が一緒とか。

共通項の中には、濃いものもあるけど薄いものもあって、薄くても共通していると認識できれば、とりあえず何かしらの関係は始められる。

 

まあ極端な話、私も相手もみんな人間、という共通項が確実にある。恐れることはなかろう。宇宙人と話すわけじゃない。

それに、日常的に出会える範囲の人なら、多くの場合「同じ言葉を話す」とか「同じ国で暮らしている」とかいう共通項もある。

そこに「同じ時間に同じ店でコーヒーを飲んでいる」とか「この店のコーヒーが好き」とかいう共通項が加われば、会話を始めるのにはもう十分すぎるのかもしれない。

 

ただ、共通項が薄いと関係性も薄くなりやすい。カフェのカウンターで偶然隣に座った人と世間話をする間柄は、多くの場合、なくなっても困らない程度のものだろう。もちろん、そこから恋とかが始まってもいいのだけど。

 

消えてもいいつながり、という言葉が浮かんだ。

 

SNSが普及した今、個人の趣味や好みが可視化されやすくなり、濃い共通項を持った人を探しやすくなった。同時に、自分と共通項の少ない人と一線を引くこともたやすくなった。

しっかりと共通項がある人とだけ付き合う、ということを選べるようになった。薄い共通項しかない人と、通じ合えるかわからないような話をする必要はない。ネット時代の人間関係は、意外にもぎゅっと狭くなっている気がする。

一方で、濃いつながりを消すのは難しい。SNSなんて、友達でいるかどうかが可視化されているのだから、意識的にアクションを起こしてつながりを作ったり消したりするわけだ。摩擦が生じるケースもあるだろう。

 

でも本当は、もっとゆるいつながりがたくさんあってもいいんだよな。

そういえば知らないうちに終わっていた…みたいな、そんな関係性があっても。

 

ガラスの向こうから少し目を離した隙に、最初から座っていた女性客の席には、いつの間にか違う男性が座っていた。別の女性客が2人加わっていた。カウンターでの会話は、知らないうちに終わりを告げていた。

 

いつの間にか始まり、いつの間にか終わる。意識的につなごうとしたり、意識的にぶった切ろうとしたりするようなものじゃなくて、もっと無意識的で、目に見えない。そんな感じの人間関係だって、普通にもっとあっていい。

というか、何かの関係ができたとしても、そういうすれ違い的な関係のほうが圧倒的多数なのだから、70億もの人間が暮らす地球上では。

 

もっと力を抜いて人とかかわろう。そんなことをぼんやりと思った。

 

私が座っているカウンターは、いかにもカフェチェーンらしく、とても他人行儀で無表情だった。どこか孤独で、どこか安心だった。

 

 

今日のカフェ情報:サンマルクカフェのパンとコーヒー。

 

 

サンマルクカフェ、なぜか好きです。ポイントカードも貯めています。でも、看板メニューのチョコクロは食べたことがありません。なぜならチョコレートが苦手だから。

クロワッサンが主役だからか、デニッシュ系のカロリー高そうなパンが多いんだよね。でもそれがなんか好きで、朝早く立ち寄ってついカロリー補給してしまうのです。カロリーはおいしい。

写真の商品はじゃがバターデニッシュ。だいたいアメリカンと一緒に食べてます。じゃがバターっていう響きが既においしそうだし、デニッシュはカロリーだからおいしいに決まってるの。

サンマルクカフェのじゃがバターデニッシュとアメリカンM、410円。

 

 

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