oikawachie official website

雑食系フリーランス 及川智恵/世界には、人の数だけ「面白い」が溢れている。

人間観察日記

【人間観察日記・5】理想的な写真の撮り方講座

投稿日:

写真は「真実を写す」と書くけれど、そもそも「真実」は1つじゃないといつも思ってしまう。撮る人の数だけ真実があって、「個々の真実が写る(写ってしまう)」というのが本当じゃないかなあと。

 

 

Vol. 5 理想的な写真の撮り方講座

休日、明治神宮前駅の交差点から表参道駅方向に、人波をかきわけるように歩いていた。

いつもどおり凄まじい人出。いったいどこからこんなに人がわいてくるのでしょうか。

 

表参道ヒルズの前あたりで、ひとりの男性に目を奪われた。

 

右手には、少し長めのレンズが付いた大きなデジタル一眼レフ。ストラップは手首に巻き付けている。左の肩には小さめの黒いトートバッグ。

黒いハットをかぶり、丸っこいメガネをかけた、あまり背の高くない男性だった。アジア系の顔立ち。切りっぱなしのアンクル丈パンツとサンダルの組み合わせが似合っていて、日本よりもシンガポールあたりにいそうな人だった。

 

で、その彼の何に目を奪われたかというと、写真の撮り方がものすごかったのだ。

 

ショーウィンドウのディスプレイに目をやったと思ったら、ファインダーを覗くことも液晶を見ることもなく、立ち止まることさえもなく、右手に持ったカメラをすっとそちらに向けて、シャッターをばさっと切り、液晶画面をちらりとだけ見て、何事もなかったかのように歩き続ける。

 

その間、たぶん1秒ぐらい。

 

いったい何だったんだ今のは??

 

彼はいつもああいう撮り方をするのだろうか。いったいどんな写真が撮れたんだろうか。もう気になって仕方がなくて、少しばかり彼を目で追ってみることにした。

 

次に彼が被写体として選んだのは郵便ポストだった。今回はポストの前で立ち止まっていたので、先ほどよりは少しじっくり撮っているようだったが、ちょっと目を離したすきに一瞬で見失うほどに、これまたあっさりと撮り終えていた。

 

何なのあの早業。

 

そして、彼を再度捉えたと思ったら、今度はまた、最初にディスプレイを撮ったときのように、ファインダーも液晶も見ずに、一瞬で被写体を見つけて腰の高さでシャッターを切った。

撮ったのはカップルの後ろ姿のようだった。ちょうど二人の腰あたりだろうか。念のため書いておくと、女性もスカートではなくパンツスタイルだったので、覗き写真とかではなく、たぶん何か感じるものや撮りたい構図があったのだろう。

 

いやはや。どんな写真が撮れているのか知らないけど、恐れ入った。

 

実はああいう感じの撮り方、私の中では究極の理想なのだ。

 

たびたび感じることなのだけど、写真って意外と、細かいことを考えずに「あっ、これ撮りたい」と思った瞬間に撮ったほうが、良いものが撮れることが多い。

もちろん、構図とか光とか、本来考えるべきことっていろいろあるのだけど、考えてから撮り直した写真よりも、最初に勢いでシャッターを切ってしまった写真のほうが、後から見直すと格段に良かったりするのだ。不思議なことに。

 

「あっ」と思った瞬間に近ければ近いほど良い気がする。即座にカメラを構えて、感覚だけで切り取れたら最高だ。感動とか驚きとか、「あっ」がそのまま写ってくれるような気がするから。

細かいことを考え始めると、そういう高揚感が薄れてしまう気がする。美しいものを丁寧に綿密に切り取るのも、それはそれで美しい撮り方だなと思うのだけど。

 

必死で考えなくても技術がするりと取り出せるように、写真を撮るという行為が身体に染み込むまで撮ればよいのだろうか。それとも、何でもいいからシャッターを切って、写ったものを面白がれればそれで良いのだろうか。

 

とりあえず、私もああいう撮り方をどんどんしてみようと思った。

あああ、彼がいったいどんな写真を撮ったのか見てみたい。

 

ある写真展に向かう途中の出来事だった。

 

 

今日のカフェ情報:春水堂のタピオカミルクティー。

タピオカミルクティーは、個人的にはオーストラリア留学中の思い出。最近は日本でも飲めるところが増えてきましたが、留学していた2002年当時、日本では見当たらなかった一方、オーストラリアにはアジアの店舗が進出していたのです。

こちらは、今回の舞台になった明治神宮前~表参道の間、1本通りを入ったところにあります。平日の昼間は比較的入りやすいですし、ランチメニューもあります。今は店舗が増えて東京以外にもありますね。これから暑い夏にはぴったり。

春水堂のタピオカミルクティー、500円。

 

 

-人間観察日記

執筆者:

関連記事

【人間観察日記・16】仕事始めはカフェ出勤

カフェはいつもやさしくて、コーヒーはいつも少しだけ現実的で苦い。     Vol. 16 仕事始めはカフェ出勤 新年4日、仕事始め。お正月モードを抜けて、少しずつ元通りになっていく …

【人間観察日記・13】1階は建前、2階は本音

人間誰もが、多面体として生きているんだけどね。     Vol. 13 1階は建前、2階は本音 久しぶりにマクドナルドに入った。 なんとなく足が向かなくなって数年が経っていた。子供 …

【人間観察日記・14】たったスプーンひとさじのことなのに

ぐるぐると考えていた。 品の良さって、内面からにじみ出る美しさって、いったい何なのだろうか、と。       Vol. 14 たったスプーンひとさじのことなのに 黒いハイ …

【人間観察日記・12】笑わなくても、あなたは素敵よ

笑っても笑わなくても、あなたはやっぱりあなたで。       Vol. 12 笑わなくても、あなたは素敵よ メガネの掛け心地が悪い。 メガネは何本も持っているが、気に入っ …

【人間観察日記・6】壊れたブレーキ

※この話は実話を参考にしたフィクションです。     Vol. 6 壊れたブレーキ 止まらない。 夫を責める言葉が、止まらない。   私はたしかに、とても怒っている。 & …

What’s New

【What’s New】
*最新情報をお知らせします*

エッセイ集「人間観察日記」Amazonで発売中!

フォトブック「レンズたちのむこう側」発売中!

 

「雑食系フリーランス月報」
↓↓近況や内緒話など毎月5日にお届け中↓↓
メルマガ登録フォーム
お名前  *
メールアドレス  *